5-4-2.『精神科学に関するドア講義』

『The Dore Lectures on Mental Science(精神科学に関するドア講義)』はロンドンのドア・ギャラリーで行われた講義記録で1909年に出版されました。その序文には以下の内容が記されています。

この本に収められている講義録は、今年初めの3ヶ月間の日曜日にロンドンのボンド・ストリートにあるドア・ギャラリーで私が行ったもので、多くの聴衆の好意溢れる要望によりこの度出版されることになりました。そのためタイトルは『ドア講義』です。

さまざまなテーマについて、いくつもの個別の論考があるため、連続性がなく、また似たような考えや表現が頻繁に繰り返されているという欠点がありますが、読者は、この著作の成り立ちに伴う固有の欠点として、これを許してくださるものと信じています。同時に、特別に意図したわけではありませんが、この本を構成する十二回の講義を通して、ある種の進歩的な思想の展開があることがわかると思います。それは、これらの講義が同じ基本的な考えを表現することを目的としているからです。すなわち、宇宙の法則は決して破ることができませんが、特別な条件のもとで働かせることによって、自然な条件のもとでは得られない結果を生み出すことができるということを述べているからです。

これはシンプルな科学的原理であり、それは人格的要素、つまり知性の位置付けを示しています。私たちの知性は現在の限定された法則の現れを超えて、その真の本質を見抜き、それによって法則の無限の可能性を力、有用性、美しさといった形で呼び起こすことができる機能を有しています。したがって、個人的な要素の働きが完璧であればあるほど、普遍的な法則から生み出される結果は大きくなります。それゆえ、私たちの研究は二つの側面から行われるべきです。一つは普遍的な法則の作用に関する理論的研究であり、もう一つはそれを利用するために自分自身をそれに適合させることです。この本がこの二つの側面の探究において読者の一助になれば本望です。

さまざまなテーマについての講義は非常に簡単な説明にとどめています。これらは皆さんが自分で考えるための思考の筋道を示唆するものであると受け止めてください。したがって、私がこれらの主題の中の一つについて集中的に執筆していたならば喜んで与えたであろう、細部にわたる入念な説明は期待しないでください。この小著は、私が感謝してこの本を捧げる非常に寛大な聴衆との断片的な講義の記録であると受け止めてください。

1909年6月5日
トーマス・トロワード

<『The Dore Lectures on Mental Science』Foreword(私訳)より>

本書は1904年出版の『The Edinburgh Lectures on Mental Science(精神科学に関するエジンバラ講義)』と並ぶトーマス・トロワードの代表作の一つです。日本語訳が出版されていないようなので私訳してみました。ご参考までにご笑覧ください。

原著者への敬意と礼儀として忠実に翻訳しているつもりではありますが、ところどころ、わかりやすさを優先させて、訳注的な内容も含めた意訳になっている箇所があります。この点、予めご承知おきいただければ幸いです。

『精神科学に関するドア講義』(私訳)の目次は次のとおりです。

第1章 Entering into The Spirit of It(その精神の内に入る)
第2章 Individuality (個別的存在)
第3章 The New Thought and The New Order (新思考と新秩序)
第4章 The Life of The Spirit (神の生命)
第5章 Alpha and Omega (アルファとオメガ)
第6章 The Creative Power of Thought (思考の創造的力)
第7章 The Great Affirmative (大いなる肯定)
第8章 Christ: The Fulfilling of The Law (キリスト:律法の成就)
第9章 The Story of Eden (エデンの物語)
第10章 The Worship of Ishi (イシの崇拝)
第11章 The Shepherd and The Stone (羊飼いと石)
第12章 Salvation Is of The Jews (救いはユダヤ人から来る)

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