5-3-0.自己実現の方法(J・アレン本)

ジェームズ・アレン(1864~1912)はイギリスの思想家で、「思考の力」や大宇宙の根本法則である「原因と結果の法則」という真理を詩的に格調高く説いた方です。

その著書はあまり多くはなく20冊程度ですが、いずれの著作もえもいわれぬオーラを発しており、後進の自己啓発書作家に多大な感化を与えました。代表作は『As A Man Thinketh』(1902)ですが、ジェームズ・アレンの哲学は20世紀にアメリカで開花した「成功と繁栄の哲学」の源流点と評価されています。また、イギリス以外での著作権を放棄したこともあり、多くの言語に翻訳され、今も世界中で読まれ続けており、聖書に次ぐベストセラーの一書であるといわれています。その代表作と邦訳版(坂本貢一訳 サンマーク出版)の一覧を示せば下記のとおりです。

ジェームズ・アレンの本には心に平和を取り戻す不思議な力があるように感じられます。詩的な香りに包まれていて感性と悟性に心地よく響き、読むだけで、だんだんと自己中心的な意識が薄められ、心が洗われ、穏やかな気分に浸ることができるようになる感じを受けます。その理由は不安や不幸感覚の温床である自己中心的なものの見方、考え方が、アレンの言霊の力で傍らに追いやられるからではないかと思います。

ところで、なぜ、「自己中」が不幸感覚の元なのかといえば、答えは極めてシンプルで、神は「自己中」ではないからです。神は私たちに永遠の生命を与え、「自己中」とは真反対の無償の愛で私たちを育んでいます。そして、人間の進化の最終目標を神への帰一に定め、私たちの思考が神の属性にない方向にずれた場合には、そのことに気付くよすがとして神の叡智で不幸感覚を覚えるように創られていると推測できます。まさに至れり尽くせりの神の愛と叡智の中で生かされているのが私たち人間であるということです。この推測は昔からよく知られている「良心の呵責」という言葉があることからも妥当であると思われます。また、『引き寄せの法則-エイブラハムとの対話』において、あの世からの啓示の送り手であるエイブラハムという名の霊人グループは「良心の呵責」に類似の事実について次のように言及しています。

「あなたがたはこの物質世界の身体に宿ろうと決めたとき、「感情という 素晴らしいナビゲーションシステム」を利用できることを知っていた。感情という指針を使えば、いつも存在する素晴らしい感情を通じて、自分がより広い知恵の方向から外れているか、それとも一致しているかがすぐにわかる。」<『引き寄せの法則-エイブラハムとの対話』吉田利子訳SBクリエイティブ株式会社 P.72>

なお、この記述があるのは同書のPart2第4節ですが、この節の原書のタイトルは「My Inner Being Communicates Through Emotion(私の内なる存在は感情を通して交信する)」であり、私の内なる存在とは私たちの心の最深部に存在する真我=仏性=潜在意識のことです。

私たちはともすれば、生きていく過程でこの世的な欲に囚われたり、自我を膨らませたりしがちですが、これが不幸感を覚えたり、不幸な人生を引き寄せたりする否定的想念の元になります。中には自我我欲にまみれた生き方をしながらも、自分は幸福であると感じている人もいるかも知れませんが、そのような人にはあの世での不幸(閻魔様のお裁きと地獄界での反省行)が待っています。なぜなら、原因と結果の法則はこの世だけで完結するものではないからです。死後も含めて、本当に豊かで幸福な人生を実現したいのであれば、自我我欲を適切に抑制しなければなりません。これを実践するうえで、読むだけでかなりの心の浄化作用あるいは意識の変革が期待できるジェームズ・アレンの著書は福音の書といえます。

例えば『The Way of Peace(平和への道)』の第6章「聖人、賢人、救世主:奉仕の法」の冒頭に次の一節があります。

「人の真理のレベルは、その人の愛のレベルであり、愛に悖る(もとる)生活をしている人は、真理から遠く離れています。不寛容で他人を非難する人は、たとえ最高の宗教を口にしていても、真理のレベルは最低です。忍耐力を発揮し、冷静に感情に動かされることなく、すべての側の意見に耳を傾け、あらゆる問題や課題に対して、自分のみならず他人をも思慮深く偏りのない結論に導く人の真理のレベルは最高です。智慧の最終テストは、その人はいかに生きているか、その人はどのような精神を体現しているか、試練や誘惑のもとで、その人はいかに行動しているかです。絶えず悲しみや失望、激情に揺さぶられ、最初に訪れる小さな試練の下に沈む人の多くが、自分は真理のもとにあると自慢しています。真理とは不変のものであり、人は真理に立脚すれば、その徳は揺るぎないものとなり、激情や喜怒哀楽、人格の豹変とは無縁になります。<『The Way of Peace(平和への道)』第6章「聖人、賢人、救世主:奉仕の法」私訳より>」

これを読めば、自ずと他人やこの世の事象を批判の目で見ている自分の心の貧しさが痛感されて、自分を正す意識が芽生えるのではないでしょうか。

このほか、この6章だけでも、心の平和を求めずしてこの世の平和を求めることの不毛さや、私たち人間の最終目標が神への帰一にあること、そのために幾度となくあの世とこの世を転生輪廻していることなどに気付かされます。ジェームズ・アレンの著書は私たちの真理の理解度を高めるのに大いに役立ちます。

自己変革と自己実現の実力を高めるために『「原因」と「結果」の法則』四部作の熟読をお勧めします。なお、処女作の第Ⅱ部『The Way of Peace』については、拙訳ではありますが別ページに私訳を掲載していますので、よろしければご参照ください。

ちなみに、ジェームズ・アレン(享年49歳)は経済的に豊かな人生を送っていませんが、それはそこに関心を向けていなかっただけのことであり、若くして亡くなった理由は成功と繁栄の哲学の礎となる教えを説くことが今回の転生の目的であり、その使命を果たせば、この世に長居する必要がないからと考えられます。

『原因と結果の法則』(坂本貢一訳サンマーク出版刊)
『原因と結果の法則』②幸福への道(坂本貢一訳サンマーク出版)
『原因と結果の法則』③困難を超えて(坂本貢一訳サンマーク出版)
『原因と結果の法則』④輝かしい人生へ(坂本貢一訳サンマーク出版)
『The Way of Peace(平和への道)』(私訳)

5-1 自己実現の方法(ジョセフ・マーフィー本)はこちら

 5-2 自己実現の方法(エイブラハム本)はこちら

 5-4-0 自己実現の方法(トーマス・トロワード本)はこちら
 

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