自己実現とは一般的には成功と繁栄を手にする、あるいは自分の理想を叶えることと受け止められていますが、真の自己実現とは「自分の内なる神性」を最大限に発揮することであるといえます。しかし、現実問題としてみれば、個人によってその目的とするところ、あるいはその中身は千差万別ではないかと思います。
「自己実現」といえばアブラハム・マズロー(1908~1970アメリカの心理学者)の欲求5段階説を想起しますが、この説によれば自己実現欲求は最上段階に位置付けられ、「自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものにならなければならないという欲求」とされています(「ウィキペディア」より)。この説に従えば、この世的な単なる身近な成功や繁栄に対する欲求は低次なものということになりますが、このサイトでは自己実現を広義に解釈して、低次の欲求や願望の実現をも含むものとして記述することにします。
私たちの多くが普通に抱く欲求や願望を欲求5段階説に当てはめると次のようにいえるかと思います。まず、経済的な豊かさですが、これは第1段階の十分な食べ物を確保したいという生理的欲求を満たすうえで不可欠な要素に他なりません。また、不眠症の解消は同じく第1段階の生理的欲求に該当し、病気や怪我などせずに健康に暮らしたいという願いは第2段階の安全欲求とみなすことができるかと思います。結婚や人間関係の調和は第3段階の社会的欲求の対象であり、成功を収めたい、繁栄したい、あるいは出世したいという願望は第4段階の承認欲求の表れであるといえます。そして、その上の第5段階は端的にいえば、このような生き方をしたい、あるいはこのような自分になりたいという、自分の理想像の実現欲求ということですので、個性が一番よく表れる段階といえそうです。
ところで、第5段階の上に自己超越欲求という第6段階があるともいわれていますが、第5段階の説明にある「自分の持つ能力や可能性を最大限に発揮し」という個所の“自分”を“神の子人間”に置き換えれば、第6段階は第5段階に含まれているといえます。なぜなら、真理に真に目覚め、真理を悟得できれば、釈尊が体現されていたように、通常の肉体人間をはるかに超えたテレポテーションなどの六大神通力を持ち、しかもそのうえで徳のある人間として最高の人生を送ることは誰にでも可能なことであるからです。
ちなみに、トーマス・トロワードも超越的な力の存在は理解していて、『The Edinburgh Lectures on Mental Science』の第11章に次のような記述を残しています。
「受講者諸君は、潜在意識がその治癒効果を発揮するうえで、表面意識の助けは必要としないことをつねに覚えておく必要があります。潜在意識の働きは大宇宙に偏在している全知全能の神の創造的な力によるものであり、客観的意識の助けを必要とするものではありません。
なお、遠隔治療は、テレパシー、透視やその他、潜在意識が時折見せる超越的な能力へ至る一ステップに過ぎません。これらの超越的な力も実は、私たちが通常目にするこの世的な重力や引力などの法則と同じくらい正確な法則によるものなのですが、ここに踏み込むことは、すべての霊的現象の根底にある基本的な原理原則を示すことを目的とした本書の範囲には適切に収まり切りませんし、これまで述べてきたことが明確に理解できるまでは、私たちの内なる力についてこれ以上踏み込んでも受講者諸君のプラスにはなりませんので、これについての言及は割愛します。
しっかりとした知識の基礎と、その実践的な応用の経験なしに、内なる力について深く踏み込むと未知の危険に身をさらすことになりかねませんし、未知の領域への前進は、既知の立場からのみ行うことができるという科学的原則にも反することになります。浅い理解のまま先に進めば混乱に陥りかねないことをよく理解しておいてください。『The Edinburgh Lectures on Mental Science』Chapter11「Healing」の私訳より引用」
私たちが超越的な能力を持つことができるのは、私たちに内在している神(潜在意識)の力によるものといえますが、ちなみに、この内なる神のことを『The Law of Attraction(引き寄せの法則)』の著者であるヒックス夫妻をあの世から指導したエイブラハムと名乗る高級霊グループは「内なる存在」と呼んでいます。
さて、経済的な豊かさ、健康、結婚、人間関係の調和、事業の成功と繁栄発展、自分の理想像等々を実現することをひとくくりにして自己実現と呼ぶことにしますが、その実現方法の基本はいたって簡単です。肯定的なことをつねに思い、考え、イメージしさえすればよいからです。とにかく、否定的なことは決して思ったり、考えたり、口に出したりせず、また、否定的なことに興味を持ったり、関心を向けたりしないことが肝要です。
これが自己実現方法の基本中の基本なのですが、実践するうえで忘れてはならないキーワード(留意点)が3つほどあります。
それは「確信」「忍耐」「持続」の3つです。「確信」とは「原因と結果の法則(善因善果・悪因悪果)」を信じ切るということです。「本当かな?」という疑い心は否定的な思いですから、よい結果を生むことはありません。「忍耐」と「持続」が大切な理由は、心にも慣性の法則というものがあり、長年にわたって深層意識にため込んできた否定的想念は一朝一夕には消し込めないからです。それ相応の努力と時間が必要だからです。それに加えて、本能の影響もあります。本能とは何かといえば、あの世で霊体をまとって存在している私たちが転生してこの世の肉体に宿るとき、精妙な霊体と粗い肉体とをなじませるためにまとう幽体という緩衝体に付随する動物的生存意識といえるかと思います。食欲、性欲、睡眠欲に代表される欲求で、表面意識によって適切にコントロールされなければ、他者に危害を及ぼしかねません。この自我の温床ともいえる本能はことあるごとに頭をもたげますので、モグラ叩きではありませんが、忍耐強く抑え続ける必要があります。また、心の中に肯定的思念だけを持ち続けることができる状態とは、自我を消し込めた無我の境地を意味しますから、この一点から見ても、肯定的なことをつねに思い続けるうえで「忍耐」と「持続」が不可欠であることがよく分かるかと思います。
以上が自己実現方法の基本中の基本ですが、一方で応用編とでもいうべき自己実現の具体的な実践方法は1900年代以降現代に至るまで数多くの書物で説かれています。著者と書物名をいくつか推挙すれば、下記のとおりです。なお、これらの書物は1回読んで終わりとするのではなく、何度も読み返されることをお勧めします。熟読玩味という言葉がありますが、読み返せば読み返すほど、その真理の言葉が深層意識へと落とし込まれて、私たちの想念波動を肯定的なものへと変える効果が期待できるからです。たとえ頭で真理を理解していても深層意識下の想念波動が変わらなければ、人生環境をよいものへと変えることはできないからです。
下記の自己実現方法の特徴および留意点についてはリンクを貼ってある個別ページをご参照ください。
5-1 自己実現の方法(ジョセフ・マーフィー本)
『眠りながら成功する』(大島淳一訳産業能率大学出版部)
『眠りながら巨富を得る』(大島淳一訳三笠書房)
5-2 自己実現の方法(エイブラハム本)
『引き寄せの法則-エイブラハムとの対話』(吉田利子訳SBクリエイティブ株式会社)
(著者はエスター・ヒックス/ジェリー・ヒックス夫妻)
5-3-0 自己実現の方法(ジェームズ・アレン本)
『原因と結果の法則』(坂本貢一訳サンマーク出版刊)
『原因と結果の法則』②幸福への道(坂本貢一訳サンマーク出版)
『原因と結果の法則』③困難を超えて(坂本貢一訳サンマーク出版)
『原因と結果の法則』④輝かしい人生へ(坂本貢一訳サンマーク出版)
『The Way of Peace』(別項にて私訳掲載)
5-4-0 自己実現の方法(トーマス・トロワード本)
『The Edinburgh Lectures on Mental Science』(別項にて私訳掲載)
『The Dore Lectures on Mental Science』(別項にて私訳掲載)
『The Creative Process in the Individual』
『The Law and the word』